タルマーリー「腐る経済」 

智頭町に来た。空気とお米と緑ととても自然が周囲に身近に感じられる場所で生き返る心地がする。宿泊先でタルマーリーの「腐る経済」が置いてあって読んでみると面白いこと。マルクスの「商品」「労働力」「使用価値」「交換価値」の解読も含まれて、現代を生きる人るの生き方が著者の今に至る道程と共に語られている。以下、抜粋。

僕ら「田舎のパン屋」が目指すべきことはシンプル。食と職の豊かさや喜びを守り、高めていくこと、そのために、非効率であっても手間と人手をかけて丁寧にパンをつくり、「利潤」と訣別すること。それが、「腐らない」おカネが生み出す資本主義経済の矛盾を乗り越える道だと、僕は考えた。

その中で、僕らは「菌」と巡り合った。純粋培養されたイーストではない、人類が昔からつきあってきた「天然菌」だ。自然界では、「菌」の営みによってあらゆるものが土へと還り、「循環」のなかで生きとし生けるもののバランスが保たれている。ときおり環境に変化が起こり、バランスが失われたときも、「循環」のなかで自己修復の作用が働いて、バランスが取り戻される。その自然のバランスのなかで、誰かが独り占めするわけでも、誰かが虐げられるわけでもなく、あらゆる生物がそれぞれの生を全うしている。「腐る」ことが、生命の営みを成り立たせている。

この自然の摂理を経済活動に当てはめるとどうなるか。生を全うする根底に「腐る」ことがあるのだとすると、「腐る経済」は、僕らひとりひとりの暮らしを、穏やかで喜びに満ちたものへと変え、人生を輝かせてくれるのではなかろうか。

このあたりの記述は、人間社会にも当てはまるなあと思った。「循環」「自己修復の作用」「バランスを取り戻す」というあたりの表現は、福祉の働きにおいても、キー概念になっていると思う。著者の考えから人間社会に学べることは多い。また「循環」や「自己修復の作用」は「菌の営み」によって保たれると。自然界における「菌」は人間社会においては何と表現されるのだろう。