武道論(内田樹)からの学び ~同期する技術~

内田先生の「武道論」からの学びをここに残しておく。

「同期する技術」

すでに同期を果たしている個体は同期の誘発力が強い。同期現象は「感染」する。蛍の集団発光でも、誘発者の周りから同期が始まってやがてそれが全体に広がる。局所的な同期が全体に「感染」する。人間の場合、まず自己同期を達成するところから始める。謡のように、自分の中にある複数の身体単位を制御してそれらを同期させることを仮に「自己同期」と呼ぶ。他者を同期させるためには、まずおのれ自身のうちにおいて自己同期を果たすところから始める。「調身、調息、調心」という言葉がある。身を調え、息を調え、心を調えることである。これが心身のさまざまな働きを一つの秩序のうちに調えることを指す言葉であるとするならば、それを「自己同期」と呼んでよいだろう。自己同期を果たした個体は、強い同期現象誘発力を発揮して、周囲の個体を同期に誘う。私の合気道の師である多田宏先生はよく「オールド・バイオリンのような声で話すように」ということを言われる。必要なのは「大きな音」ではない。「届く音」である。謡の稽古をするようになってから、「大きな声」と「届く声」がまったく別のものだということを身を以って味わった。そして、「届く声」を獲得することが、そのまま能における謡の説得力につながることを学んだ。

→すでに同期を果たしている個体として、内田先生や森田さんが浮かぶ。この方々は誘発力が強い。身を調え、息を調え、心を調える、自己同期の訓練を始めること。その訓練ができる場に自身の身を置くこと。その動線は今もある。ノイズが消える動線を感知できるよう、感度を研ぎ澄ませて。