感じるオープンダイアローグ(森川すいめい)所感

「感じるオープンダイアローグ(森川すいめい著)」読了。”対話がなぜこころを癒すのか”を著者の実体験に基づいた話と、対話を開くためのエッセンス・型・方法が述べられており、大変勉強になったので、下記にまとめておきたい。

対話がなぜ心を癒すのかについて、困難な状況にある人と対話の場を開くために、ケロプダス病院では3年以上の対話実践者になるトレーニングを積んでいると。『トレーニングの内容は、少しずつ自分のことを話、言葉に耳を傾けてもらい、仲間と対話しながら自分自身と向き合い、自分が自分の理解者になるというもの。自分自身との対話ができていなければ、他者との対話を開くことなどできない。他者を理解しようとするトレーニングを行うのと同時に、自分を理解すること、それが対話実践者になるための第一歩だった。』ここで著者自身がトレーニングにて自分のことを話して他者に聴いてもらい受け止められる中で、自分の過去と向き合いなおし、感情が洗われ直しながら、自分の理解を深めていくプロセスが書かれている。少し長くなるけど下記に引用する。『「どうして私は働いているのか。なぜこの仕事をしているのか・・・」相談者の苦悩を聞くことは、自分のこころを震わせる。それに耐えられないから、鎧をまとい、自分を守ろうとする。しかし鎧は、自分のことを話したり、相手と対話することを難しくする。このトレーニングでは、自分が鎧を着ていることを知り、鎧を脱ぎ、その下の傷を露わにして、自分が傷ついていることを話す。傷はとても痛むものだ。そこに触れられたら、感情は大きく揺さぶられる。涙を流すかもしれないし、怒ってしまうかもしれない。だから、その傷は癒されなければならない。傷ついたまま鎧を脱いだら、話を聞くうちに感情が大きく揺さぶられて、自分がひどく傷つくか、反対に話した人を深く傷つけてしまうかもしれない(中略)。私は自分自身と向き合い、自分の傷を理解して、鎧を脱いだままで自分の人生を進められるようにならなければならなかった(中略)。自分の家族については話すテーマは私にとってもっとも触れられたくない事柄だった。ほんの少しこころの扉を開くと、開いた傷から感情が一気に言葉になって溢れ出た。少しだけ話すなんて、できるはずがなかった。話すか話さないか、そのどちらかしかなかった。スタッフが「誰もが、自分の人生の中で、こころに傷を持っています」と話してくれた。自分の話をするというトレーニングでは、どうしても自分自身のこころの傷に触れることになる。私は最初に家族の話をしたとき、涙を流し深く嗚咽したことに驚いた。私は過去に蓋をしていただけだった。私は仲間たちに身をゆだねて涙し、自分で立つことができるようになるまで支えてもらった。』

ここで専門職であることを「鎧」と巧みに表現されている。自分も相談者の相談を受けている時に、自分自身の鎧が対話を邪魔していることを感じる場面はよくある。自分の鎧を脱ぐこと、これは著者の言うような体験を通してでないと身につかないであろう。また、「自分の話をすることが、自分自身のこころの傷に触れることになる」ということは相談を受ける時に、改めて肝に銘じておかないといけない。相手の相談を受ける立場にある人間は、何でもかんでも、相談者の経歴や相手の事を聞こうとするが、それがこころ傷に触れることになることに繊細な留意を払いつつ、受け止めていくことが大事なのだろうか。

次に、「Rely on process(プロセスに依拠しないさい)」というトレーナーの言葉が印象に残った。「トレーナーたちは、私のことを理解しようとはしたが、私のプロセスを阻害するようなことはしなかった。私は、自分の気づきのプロセスや、その速度について、誰にも口を挟まれることなく、自分のペースで進めることができた。かれらは私に変容を求めることなく、ただ一緒に同じ方向を向いて歩んでくれた。」これも、相談支援の働きの中では、重要な構え(態度)であると思う。

最後に対話に導く型の話があったので、ここにまとめて、日々の相談支援実践に活かせるようにしたい。

①まず、ここに来た経緯を全員から聞く。(この場について、どのように聞いているかを、それぞれお聞きしてもよろしいですか?)

②次に、今日この場で話したいと思う事をそれぞれに聴く(今日、ここで話したいと思う事や、この場に期待していることを、それぞれお聞きしてもいいですか?)

③その中から、どの話をしていくか決める

③の話で一旦区切りがついたら、スタッフだけで輪になって感じたことを本人たちのいる前で短く話す(リフレクティング)。これをおよそ1時間で行い、残り15分で話したいことがあるか聞く。希望があれば次の予約を入れる。

がんばるぞ!