社会的共通資本(自然環境)を学ぶ

社会的共通資本(宇沢弘文)読了。「地球環境」の章に関してまとめ。社会的共通資本とは、ゆたかな経済生活を営み、すぐれた文化を展開し、人間的に魅力ある社会を安定的に維持する、このことを可能にする社会的装置(経済学用語)のこと。社会的共通資本には、自然環境、社会的インフラ、制度資本の3種類がある。社会的共通資本は「それなしでは共同体が維持できない」という意味ですぐれて公共的なもの。公共的なものの管理運営は「私人」に委ねることはできない。

本の中で、「自然環境は経済理論のなかでどのように位置づけたらよいか」と問い、考察を展開する。地球は「大気の存在」のおかげで人間をはじめとする生物が生息できていること。自然環境に対して、人間が歴史的にどのようなかたちで関わりをもったかに留意が必要な事。「文化」というとき、伝統的社会における文化の意味と、近代社会における意味との間に差異が存在すること。伝統的社会の文化は、地域の自然環境のエコロジカルな諸条件にかんして、くわしい深い知識をもち、エコ・システムが持続的に維持できるように、その自然資源の利用にかんする社会的規範をつくりだしてきた。一方、近代社会になるにつれ、人間の移動が自由になるとともに、文化、宗教、環境の乖離が拡大化され、とくにヨーロッパによってアフリカが植民地化されるプロセスを通じて、資源の搾取がより広範な地域でおこなわれるようになり、伝統的社会のもつ、それぞれの限定された地域に特定化された地域は無視され、否定されていった。伝統的な自然環境と密接なかかわりをもつ知識は、経済発展の名のもとに否定され、抑圧されていった。という考察は興味深い。

続いて、1960年代からの「公害問題」1990年代からの「地球温暖化」の問題、それに対する環境税(炭素税)にもふれている。この問題意識は、現代の斎藤幸平さんの人新世の資本論に連なっており、今後の半世紀における大きな社会の課題の一つになると思った。学生時代から、地球の成り立ちや自然環境には興味があったし、これからの自分の生活や生き方にも、環境問題を意識した生き方をすることは、自分達の次の世代のためにも必要な姿勢になるのでないだろうか。