自らの生活圏で相互支援のネットワークを

斎藤幸平さんと中島岳志さんの「人新生の資本論」をめぐっての対談。またもや「コモンの再生」がキーワードに語られている。いくつかのポイントを引用。

地質年代「人新生」とは、地球の表層が人間の経済活動の痕跡、つまりビルやダム、農地によって覆われてしまったという意味で用いられている用語。大気中の二酸化炭素も人間の経済活動のせいで急増。気候変動に代表される環境危機をここまで悪化させたのは、無限の経済成長に社会を駆り立てた資本主義である。

(中島)もう一隻の船を出さないといけない。経済成長を唯一のモデルとする社会モデルとは抜本的に異なるビジョンを提供しないといけない。その理知的な理論的な土台が「人新生の資本論」になりうる。

(斎藤)私のいうコミュニズムは、資本主義が壊してきた〈コモン〉の領域を再び構築していく、コモン主義。コモンとは、水や電気、食料、医療など誰もが必要とする、みんなのための財産です。資本の力で管理するのでなく、市民の手で管理する「〈市民〉営化」を目指す。それがコモンを再生し、その領域を広げていく。そうやって資本主義ではない領域を増やし、利潤追求とは無関係な経済システムを作っていくことで、環境を守り、気候変動に歯止めをかけ、相互扶助の関係を再構築していく。ここにしか未来への道はないのでは。

 次の職業については、社会福祉に限らず、斎藤さんの言うコモンの再生を自分の住んでいる地域で取り組んでいけるようなフィールドで挑戦してみたい。農業は食料の生産であるので、コモンの再生のための一つのフィールドになるのでないか。また、農業以外でも、社会的共通資本の領域(自然環境、社会インフラ、制度資本)に関わる領域での仕事であれば、コモンの再生の一つになるのでないか。

 それを目指すには、”地域”というフィールドが重要になると思う。松戸などの都市圏では、経済成長への圧力が大きくかかり、コモンの再生どころか、壊していく方向への圧力が強い地域でないかと思う。内田先生の「コモンの再生」にも書いてあったが、(これからの日本社会でリスクヘッジをしようとするなら、とにかく我が身に「もしものこと」があったら、支援してくれる人の頭数を増やしておくこと、それに尽くされます。相互支援のネットワークを構築して、そのメンバーとして積極的に活動すること、それが一番のリスクヘッジです。)目指すところは、自分の生活圏で相互支援のネットワークを築いていけるか。これは職場でやっても、自分自身の実存に係らないので意味があまりない。まずは、自分の足元から始めないと。地に足のついた生活を。